製品を取り巻くパッケージやプロモーションツール、様々な分野でデザインが力を発揮する。 しかし、「良く見せる」のではない。「流行っているように思わせる」のではない。 本当に「良いモノ」に仕上げる。それがプロダクトデザイン。
プロダクトデザインは、様々な製品の意匠(スタイリング・カラー・マテリアル)を設計し、審美性や機能性、利便性、生産性を意図的に向上させる高度な特殊技術。様々な問題解決を図り、本来そこにある価値を見出し、製品のあるべき姿を形にします。
所有する価値がある。製品を通して得られる体験(ユーザーエクスペリエンス)にはさらに価値がある。 その価値が提供される時、製品はどうあるべきなのか。ユーザーにとってのベスト、 社会にとってのベストは何か? それを考え抜いて解を得る。その解を具現化し、製品に反映する。それがプロダクトデザイン。
「プロダクトデザイン」とは何か? 一言で表せば「製品のデザイン」という意味です。私たちの身の回りにある家電製品や文具といった生活用品、医療機器、自動車、工場で使用される産業機械のような工業製品から手作りの伝統工芸品のようなものまで、ありとあらゆる製品が対象となります。
「グラフィックデザイン」「Webデザイン」との違いは? プロダクトデザインのように〇〇〇デザインと表現をする言葉で「グラフィックデザイン」や「Webデザイン」等があります(広義に捉えれば、それらもプロダクトデザインの中の一種とも言えますが、ここでは狭義のプロダクトデザインと分けて、別ジャンルのデザインであるという設定でご説明します)。製品を購入する前(使う前)から、優れたパッケージデザインにより良い製品であると感じてもらったり、お買い得だと感じてもらったり、魅力的なWebデザインによりそのブランドや製品に興味を持ってもらい、その存在自体を知ってもらったりと、製品を取り巻くパッケージやプロモーション、マーケティングの分野でそれらのデザインが力を発揮します。しかし、それらは製品そのものを変えるデザインではありません。「良さを伝える」「良く見せる」「流行っているように感じさせる」といった期待感を抱かせることはマーケティングの上で非常に重要ですが、製品そのものが本当に良いモノになっていなければ、結果的に”期待外れ”ということになります。
近年、「デザインの力で商品をブラッシュアップ」のようなキャッチコピーで商品にデザインを取り入るためのデザイナーと企業とのマッチングが多くなっています。しかし、その多くは”パッケージデザインや伝え方や見せ方を工夫するだけで売上アップ”という内容のものです。もちろん、売れなければ商品はお客様の手元へ渡らないので、それはそれで非常に重要なことです。しかし、お客様はその商品をずっと使い続けることになります。その商品自体が本当に良いモノになっていなければ、商品のリピート購入もされず、商品やブランド(メーカー)の評価も下がり、その口コミが回り回ってブランドの経済活動にも悪影響を与えることになります。そこで「プロダクトデザイン」が必要となります。
「プロダクトデザイン」に課せられたミッションとは? プロダクトデザインは、製品そのものを本当に良いモノにするための特殊な工業技術です。他ジャンルのデザインとご紹介の順番が逆になってしまいましたが、本来は良いモノを作ることが前提とならなければなりません。良いモノ、良いサービスだからこそ、その良さを伝えるということが発生します。プロダクトデザインは製品の形、色、素材、表面処理、感触、場合によっては構造や機能に至るまで様々な仕様を策定し、審美性を向上させます。”プロダクト”とつくからには、販売するこを前提とする必要があり、より美しく、より生産しやすく、より売れるモノに仕上げることもプロダクトデザインに課せられた重要な役割となります。
「インダストリアルデザイン」とは何か? 一言で表せば「工業製品のデザイン」という意味です。「インダストリアルデザイン」は日本語では「工業デザイン」とも言います。プロダクトデザインと同じように製品のデザインを指しますが、その中でも、特に大量生産を前提とした工業製品を対象とし、手作りの伝統工芸品のような製品を含みません。※但し、大量生産ではない一点ものの義手や義足のような装具であっても、同じ技術が使われ、再現性のある加工ができるのであれば、それもインダストリアルデザインと言えます。
「プロダクトデザイン」「インダストリアルデザイン」との違いは? インダストリアルデザインはプロダクトデザインの中の一種です。しかし、実情として「プロダクトデザイン」という言葉の中でもその大部分を「インダストリアルデザイン」が担っていると言っても良いため、広義には インダストリアルデザイン + プロモーション・マーケティング戦略も含めた 総合デザイン という意味で、プロダクトデザインという言葉がインダストリアルデザインに取って代わって多用されるようになってきました。
「インダストリアルデザイン」における技術 インダストリアルデザインは工業製品を対象としているため、量産できるデザインであることが絶対条件となります。そのため、インダストリアルデザイナーはありとあらゆる加工方法、材料特性についての知識が必要となりますし、インダストリアルデザイナー自身の考えを的確に関係者に伝達するための表現力が必要となります。また、ユーザーに与える身体的影響や心理的影響、社会や環境に与える影響、安全性の担保、使いやすさの追求も必要となり、人間工学や機械工学に関する知識も必要となります。メーカー企業の事業理念や社会的課題も鑑みて製品デザインに反映するために、哲学的で倫理的な思考ができる必要があります。
ブランディングや販売戦略にも密接に関与 大量生産が前提ということは、当然、大量に販売することが前提となります。そのためのデザインでもあるため、ブランディング戦略や販売戦略も考慮しつつ、そこから逆算して製品仕様を策定する必要もあります。
「ユーザーエクスペリエンス」に重点を置くデザイン 近年、製品を所有すること自体の価値、物質的な価値だけでなく、その製品を通して得られる体験自体に価値があるという考えでデザインを捉えることも、インダストリアルデザインの重要なテーマとなっています。その製品が価値を提供している時に、製品はどうあるべきなのか?それが製品デザインにも反映されています。「この製品は何を想って、このデザインになっているのだろう?」そういう視点で製品デザインを眺めるといろんな気づきがあります。ぜひ、身の回りのモノを眺めてみてください。
誰のためのデザインなのか、何のためのデザインなのか。本来あるべき姿、そこにある価値を見出し、製品に投影する。使い手、作り手、売り手にとっての解を一つに重ねる。そのことに正面から向き合い、事業活動に芯の通るデザインを実現します。
プロダクトデザイン、筐体設計、機構設計、試作、量産、プロモーションまで、トータルデザイン 弊社、スタジオディーピーアイ株式会社では、製造や小売り等にも精通するプロダクトデザイナーが、筐体デザインから機構設計まで表裏一体で形状構築を行います。”デザイナーがデザインして、別の設計者が設計をする”という工程では到達が難しい「解」にも、効率的に辿り着くことができます。製造に関する知識・経験も深く、商社や小売店への卸や自社ECでのD2Cシステム構築等、マーケティングやプロモーションにおいても様々な提案が可能。
製品デザインを検討するための、手描きデザイン画 手描きのデザイン画、3D-CAD設計、2D-CAD図面、実写レベルのリアルなCG画像等、様々な表現方法で、まだ見ぬ新製品の姿を描き出します。※手描きデザイン画:マーカーで手描きする場合とPC上でデジタル手描きを行う場合もあります。
デザイナーがワンストップで行うからこそモノづくりにおける様々な障壁を効率的に超越していける。そうでなければ実現することができない至高のプロダクトがある。弊社だから出来る至高のモノづくり領域がある。
プロダクトデザイン、筐体設計・機構設計、クレイモデル試作、光造形試作、CAE、製図等、一連の製品開発工程を解説。
ゲームコントローラーの製品開発を例に 実際に行った開発工程をご説明します。※本来、形状には理由があり、デザイン意図がありますが、それらの説明は割愛します。
まず、ご依頼内容・ご要望、対象製品を取り巻く環境(業界・競合他社・ユーザー、市場の遷移等)やクライアント企業の目指すブランドポジション、製品に求められる一般的な性能等をヒアリング。その時点では想定されていないことについてもディスカッションの中で新たな可能性を見出し、デザインの材料となる情報を引き出します。
クライアント企業側のPM(プロダクトマネージャ)による綿密な市場調査により、市場の既存商品におけるトレンドや、ボタンの配置に対する評価等を確認。その上で本プロダクトが目指すべきデザイン仕様、設計仕様を策定し、目標値を設定します。
本プロジェクトにおいていは、持ちやすさ、各種ボタンへのアクセスのしやすさの向上が求められるため、まずはどのような形状であれば、持ち感にどのような影響を与えるのか、各種ボタンへのアクセスのしやすさはどのように構築できるかを、クレイ(粘土)で流動的に形状を変えながら探っていきます。
クレイから得られた握りやすさやボタンへのアクセスしやすさの要素をヒントに、さらに様々な可能性、方向性を探るためアイディアスケッチを描きながら製品としてまとめていくための考案を進めます。部分的な利便性のアイディアや製品全体の特徴もこの段階で模索します。
アイディアスケッチを基に、数パターンのコンセプトデザインを作成。その中で選定したものをベースに、さらにバリエーションを3パターン展開し、最終デザイン案を制作。
最終デザイン案を基にクレイモデルを製作。パテ(紙粘土のようなもの)で形状を作り、塗装。持ちやすさやボタンへのアクセスしやすさ、外観意匠の審美性等を検証。
PMと共にクレイモデルを検証後、握り具合やボタン配置を調整。
調整後のクレイモデルを3Dスキャンし、ポリゴンデータを作成。
ポリゴンデータに倣って、3D-CAD上でサーフェイスモデリング。クレイモデルは左右対称ではないため、左右の内、より理想的な部分を良いとこ取りして左右対称にミラーリング。
3D-CAD上で意匠面設計、機構設計を行い、3D-CAD上で作動範囲の確認や干渉チェック等の検証を行いながら、設計変更を繰り返します。ハウジングやボタン類はもちろんのこと、内部部品や基板レイアウトに至るまで、コンパクトな外観意匠を実現できるよう弊社内でフル設計を行います。
CAD上での検証、設計修正を終えたところで、高精細な3Dプリンタ(光造形)で出力し、基板・バッテリーも実機同様に組み上げ、使用感や作動状況を検証。
試作品に対し、パテ盛りしてホールド感を調整し、ボタン配置についてもさらに調整。それらの変更内容を3D-CAD上でも設計データに反映。
落下やボタン類を強く押した場合等を想定し、CAE検証。
応力解析の結果を基に、肉厚調整やエッジにフィレットを設ける等して、応力が一部に集中しないよう設計修正。
最終的な量産加工に向けた形状の微調整。射出成形におけるヌキ勾配付け、公差の中間値調整、押切段差付け等を製品形状に反映。
3D-CADデータを基にCGソフトで質感を設定し、カラーリングや表面処理をシミュレーション。ボタンの2色成形の具合、本体のシボ加工や鏡面加工の範囲等を検討。
最終仕様を確定。イメージ共有、先行営業のためハイクオリティなCG画像を制作。
2D-CADにて製図。射出成形に向けて重要寸法や幾何公差、加工指示を記載。BOM(部品一覧表)を作成し、量産準備。
ゲームコントローラーの製品開発においては、クレイモデルを通して握りやすさやボタンへのアクセスのしやすさ等スタイリングを模索する工程がありましたが、製品やプロジェクトによって工程は様々に組み替えますので、クレイモデル製作工程を含まない場合もあります。一参考例としてご覧ください。また、「利便性の追求」「そもそも・・・・」「本来あるべき姿」「ユーザーエクスペリエンス」「コストダウン」「高級感の付与」など、プロダクトデザインのデザイン工程ではプロジェクト毎に様々なアプローチがあります。このゲームコントローラーの例では「そもそも」と「利便性の追求」からアプローチした結果がデザインとして反映されています。それについてはここで詳しくご説明できておりませんので、お会いできる機会があればデザイナーより直接ご説明しましょう。
WORKSページにプロダクトデザイン、筐体・機構設計の弊社実績の一部を掲載しています。ぜひ、ご覧ください。
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